2024.10.15
中小企業の売上アップに再現性の高い3つの戦略をわかりやすく解説
目次
売上アップを目指す際、第一に目を向けるのは「数字」という方は、少なくありません。もちろん、売上数や利益の数字を伸ばすことは、重要です。
しかしながら、数字以上に大切といっても過言ではないのが「再現性」です。なぜなら、数字的には小さな成功でも、それが再現可能であれば、拡大し続けられるからです。
本記事では、一時的な売上増加ではなく、持続的な成長を実現するための考え方と戦略を学んでいきましょう。
売上アップの数字より「再現性」を重視すべき3つの理由
一時的な売上増加ではなく、持続的な成長を実現するためには、再現性の高い戦略を実践することが欠かせません。
最初に、その背景となる3つの理由を確認しておきましょう。
(1)再現できない成功はギャンブルと同じ
1つめの理由は「再現できない成功はギャンブルと同じ」だからです。
「ビジネスは、ギャンブルではない」という主張に異議はなくとも、実際には、ギャンブル的な経営になっているケースは少なくありません。
ビジネスもギャンブルも、「投資して、利益を回収する」という点では同じです。何が違うのかといえば、再現性の有無です。
【再現できない成功の例】 |
●運や偶然によるもの:予期せぬ大口顧客の獲得や競合の撤退など、運や偶然に左右される成功は再現性が低くなります。これらは企業の努力や戦略とは無関係に発生するため、長期的な成長戦略としては頼りにできません。 ●個人への依存:特定の従業員の才能や人脈に依存した成功は、その人物が去ると再現できなくなります。たとえば、カリスマ営業担当者の存在だけで売上を維持している場合、その人材の離職は企業に大きな打撃を与えかねません。 ●外部要因への過度の依存:政府の補助金や規制緩和など、外部要因に依存した成功は、政策変更とともに再現できなくなる可能性があります。自社の強みを活かした独自の価値提供が重要です。 |
再現性のない成功は偶然の産物であり、これらはギャンブル的といえるでしょう。
(2)リソースを無駄遣いしないで済む
2つめの理由は「リソースを無駄遣いしないで済む」からです。
売上アップを目指すなかで、企業は限られたリソース(資金や従業員の労力・時間など)を有効活用する必要があります。
しかしながら、ギャンブル的な売上の作り方を繰り返す企業では、社内が非常に疲弊しやすい特徴があります。
【リソース浪費の例】 |
●人材の疲弊:成功と失敗のアップダウンが大きいうえに、常に新たな一発勝負を求められるため、従業員のストレスが蓄積しやすくなります。 ●リスク管理の不足:過度なリスクテイクにより、企業の財務状況(資金繰りやキャッシュフロー)が不安定になる可能性があります。 ●顧客との関係性の希薄化:一時的な購買促進に注力するあまり、長期的な顧客満足度が低下する恐れがあります。 ●長期的視野の欠如:即効性のある施策を優先し、中長期的な研究開発や新規事業の創出がおろそかになります。 |
経営とは、マラソンのようなものです。リソースの無駄遣いを防ぎ、効率的に活用できるようにすることが、企業の持続的な成功につながります。
(3)小さな成功でも再現できれば拡大し続けられる
3つめの理由は「小さな成功でも再現できれば拡大し続けられる」からです。
とりわけ、ギャンブル的なアプローチで大きな売上増を経験した企業は注意が必要です。往々にして、再び同じ経験を求めてしまうからです。
小さくとも再現可能な成功の積み重ねこそ、持続的な売上成長をもたらすという事実に、目を向けましょう。
【再現性のある小さな成功の利点】 |
●スケーラビリティ(拡張性)の高さ:成功モデルが確立されれば、ほかの部門や地域にも展開しやすくなります。 ●リスク分散:複数の小さな成功を積み重ねる手法では、特定の戦略や市場に依存するリスクを軽減できます。 ●投資効率の向上:成功モデルが明確になると、より効果的な投資判断ができます。ときには、大きな金額の投資も、確信を持ってできるようになります。 ●組織文化の醸成:再現性のある成功を重ねていくと、「できる」という自信が組織全体に浸透します。この前向きな文化が、イノベーションや新たな挑戦を促進し、企業の長期的な成長につながります。 |
再現性の高い施策での成功は、従業員のモチベーション向上にも寄与します。一過性ではなく、「継続的な努力が実を結んだ」という実感が、従業員の自信とやる気を高めるからです。
まず取り組みたい3つの基本戦略
では、具体的にどのように再現性のある施策に取り組めばよいのでしょうか。その手法は無限にあり、各企業によって異なります。
ここでは、中小企業と相性のよい3つの基本戦略をご紹介します。
(1)ニッチ戦略:狭くても深い市場で勝負する
まず1つめの戦略は「ニッチ戦略」です。
【ニッチ戦略:狭くても深い市場で勝負する】 |
●再現性:特定市場での専門性を活かし、安定した顧客基盤を構築できる。 ●中小企業との相性:リソースを効果的に活用でき、大企業との直接競争を避けられる。 |
ニッチ戦略は、大企業が参入しにくい狭い市場で、特定の顧客ニーズに特化した製品やサービスを提供する方法です。中小企業でも、限られたリソースを有効活用し、ニッチ市場で高いシェアを獲得できます。
【ニッチ戦略の進め方】 |
●ターゲット層を絞り込む:特定の顧客層に特化し、ニーズに合わせた商品やサービスを提供します。 ●差別化ポイントを明確にする:競合との違いを明らかにし、自社の強みを最大限に活かします。 ●専門性を追求する:ニッチ市場で求められる高い専門性を身につけ、顧客からの信頼を獲得します。 ●価格競争を回避する:専門性や差別化により、価格以外の価値を提供し、価格競争を避けます。 |
たとえば、
「食品メーカーが、地元の伝統野菜に着目し、その野菜を使った加工食品に特化する」
という戦略は、ニッチ戦略です。全国的な知名度は低くても、地元市場で高いシェアの獲得が期待できます。
市場規模は小さくても、確実に売上を積み上げていくことが可能です。
(2)顧客体験の差別化:独自の価値提供で顧客を惹きつける
2つめの戦略は「顧客体験の差別化」です。
【顧客体験の差別化:独自の価値提供で顧客を惹きつける】 |
●再現性:一貫した顧客体験の提供により、ロイヤルカスタマー(企業・ブランドに対して強い愛着を持ち継続的に利用する顧客)を育成できる。 ●中小企業との相性:大規模な投資をしなくても、顧客体験は工夫次第で高められる。 |
顧客体験(カスタマーエクスペリエンス、CX)は、企業と顧客との全接点を通じて形成される、総合的な体験や印象・感情を指します。
製品やサービスの品質だけでなく、購買前後の顧客体験を含めた包括的な価値提供によって差別化を目指すのが、顧客体験の差別化戦略です。
【顧客体験の差別化のポイント】 |
●顧客視点に立つ:顧客の立場に立って、真のニーズを理解することが出発点です。 ●独自の価値を提供する:他社にはない独自の価値を提供し、ここでしか体験できない唯一無二を目指します。 ●体験の質を高める:購買前から購買後まで、いつでも一貫して高品質な体験を提供します。 ●感動を創出する:顧客の期待を大きく超えて、心に残る感動体験を創出します。 ●ストーリー性を持たせる:商品やサービスにストーリー性があると、感情移入や共感がしやすくなります。 |
たとえば、
「あるホテルが、宿泊客一人ひとりの好みに合わせて、部屋のインテリアやサービスをカスタマイズする」
というケースは、ほかのホテルにはない特別な滞在体験を提供する差別化戦略です。
製品やサービスによる差別化が難しい時代だからこそ、自社ならではの価値を追求し、顧客に感動を届ける体験設計が求められます。
(3)CRM:強固な関係性で顧客とつながる
最後に、3つめの戦略は「CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)」です。
【CRM:強固な関係性で顧客とつながる】 |
●再現性:長期的な関係構築により、安定した売上と口コミ効果が期待できる。 ●中小企業との相性:顧客との密接な関係性を築くことは、大企業にはない強みとなる。 |
CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント:顧客関係管理)は、顧客との長期的な関係性を構築し、信頼や愛着を高めて安定的な売上を確保する戦略です。
【CRMの実践ステップ】 |
●顧客データを整備する:顧客の基本情報や購買履歴などのデータを一元管理します。 ●コミュニケーションを強化する:メールやSNSなどを活用して、定期的に顧客とコミュニケーションをとります。 ●顧客の声に耳を傾ける:顧客の意見や要望に真摯に耳を傾け、製品やサービスの改善に活かします。 ●ロイヤルティプログラムを導入する:ポイント制度や会員特典など、リピート購入を促進する仕組み(ロイヤルティプログラム)を用意します。 |
たとえば、
「ある美容室では、顧客のヘアスタイルや好みをすべて記録し、それらのデータをもとに、カウンセリングや接客を行っている」
という例は、CRMの実践といえるでしょう。
顧客との良好な関係構築は、リピート購入による安定した売上をもたらします。さらに、口コミや紹介を通じた新規顧客の獲得にもつながるため、長期的な視点で注力すべき重要な戦略となります。
まとめ
中小企業が売上アップを実現するためには、再現性の高い戦略を選択し、着実に実行することが重要です。
今回ご紹介した、ニッチ戦略・顧客体験の差別化・CRMは、いずれも中小企業の強みを活かせる戦略であり、大企業との差別化を図るうえでも有効です。
まずは小さくても確実な一歩を踏み出すことが、売上アップへの近道となります。
監修:ティネクト株式会社